顎関節症U・V・W型



顎関節症U型 - 関節包・靭帯の障害

顎関節部が捻挫をしたような状態です。関節円板の後部組織や、関節包、靭帯に力が加えられて損傷が生じ、関節包炎や滑膜炎といった炎症を伴うことで、痛みが生じるような症状です



顎関節症V型 - 関節円板の障害

これはT型についで多く、関節円板が本来の位置から前にずれてしまう症状です。関節円板というのは前後の連結はあまり強くありません。そのため前後に動きやすい反面、関節円板の後部組織は伸びやすい構造となっています。関節円板が前後に動いているうちに、後部組織が伸びてしまい、関節円板が前にずれたままとなった状態を「関節円板前方転位」と呼びます。


>>クリック音とは
関節円板がずれた状態で口を開こうとすると、下顎頭は関節円板の下に強引にもぐりこみ、関節円板を上に乗せて(本来の状態)、さらに前に進みます。強引にもぐりこむため、下顎頭の上に関節円板が勢いよく戻る際に、「カクン」、「コックン」といった関節雑音を生じます。これをクリック音 といいます。

口を閉じる際、下顎頭は後ろに戻りますが、関節円板前方転移の場合は、関節円板が一緒には戻らず、下顎頭だけが関節円板の下から離れ、もとの位置に戻ります。この際にもクリック音が生じます。クリック音とともに痛みを感じる人もいるそうですが、大半は痛みを伴わないそうです。

口を開け始める時にクリック音がする人と、口をあけた最後にクリック音がする人がいて、最後のほうで音がする人ほど、関節円板の引っ掛かりが強く、もとに戻りにくい状態にあります。左右どちらか片方だけに関節円板のずれによる症状が見られる人でも、MRIなどで画像診断すると、症状のない反対側もずれている人が多く、両方に症状を感じる人とあわせると、両方がずれている人は75%にものぼるそうです。


>>復位を伴うとは
関節円板が前方にずれた状態であっても、下顎頭がずれた関節円板の下にもぐりこみ、本来の形に戻って移動するので、これを「(復位を伴う)関節円板前方転移」と呼びます。この状況からさらに悪化すると、復位を伴わない関節円板前方転移へと進行してしまいます。ただしほとんどの場合、復位を伴う状態で経過していくので、そこからさらに復位を伴わない状態へと進むのは全体の5%ほどだそうです。

■ 復位を伴う関節円板前方転移

・口を閉じた状態


・口を開きかけた状態


・口を開いた状態


>>復位を伴わないとは
復位を伴わない場合、下顎頭と前方にずれた関節円板との引っ掛かりが強いため、下顎頭が関節円板の下にもぐりこめなくなり、下顎頭と関節円板との本来の位置関係を回復することができなくなります。この状態では、下顎頭の前方への動きも制限されるので、口が大きく開かなくなります。この状態を円板性の開口障害、「クローズド・ロック」と呼びます。

■ 復位を伴わない関節円板前方転移

・口を閉じた状態


・口が開かなくなった状態


>>痛みについて
関節円板が前方に転移した場合、変わって関節円板後部組織がちょうど下顎頭の上に来ることになります。この後部組織には血管や神経がいっぱい通っているので、開口時の刺激により痛みが生じると考えられます。



顎関節症W型 - 変形性関節症

変形性関節症とは、顎関節に強い負荷が、繰り返し、長時間持続して加えられることで、その圧力により、骨の周囲などに新たな骨組織が形成されてしまう症状です。口の開閉時にゴリゴリ、ジャリジャリといった音が生じるのが特徴で、滑膜炎等の症状を伴うと痛みがでます。

ただし、強い負荷が加えられたとしても、すべての人で骨の変形が生じるわけではなく、仮に骨の変形が生じたとしても、そこからどんどん進むことはまれです。骨の変形がある程度進んだところで、体が適応し、それ以上の進行が止まるのが普通です。このような症状は無自覚で起こることが多く、「リモデリング」と呼ばれ、正常な反応のひとつとされます。

変形性関節症や復位を伴わない関節円板前方転移などでは、関節腔内で癒着が生じることがあります。口が開かないといった開口障害が長期間続き、さらには滑膜炎も伴った場合に、関節円板と滑膜が癒着してしまいます。こうなるとさらに、下顎骨の動きは悪くなります。







顎関節症はこれら症状(T〜W型)が単独で出ることもあれば、複数にまたがって出ることもあるという、多くのケースが考えられる病気です。







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